めまいイメージ

良性発作性頭位めまい症

耳が原因のめまいで一番多いものは良性発作性頭位めまい症です。50代以降の女性に特に多いとされます。寝返りを打った時、頭を洗うために下を向いた時、ベッドから起き上がった時など頭の位置が変化したときにめまいが出現します。内耳にはバランスをとるために耳石という細かいカルシウムの石がありますが、この耳石が外れて三半規管に迷い込むことで起こるめまいです。
診断は赤外線CCDカメラを用いて眼の動きを観察することで行います(頭位眼振、頭位変換眼振検査)。治療は特殊な方法で頭を動かす頭位治療や抗めまい薬、制吐剤を用いた対症療法を行います。

メニエール病

突然、片方の耳鳴り、難聴などの耳の症状が起こるとともに激しいめまいが起こります。メニエール病患者さんの耳には内リンパ水腫という水ぶくれができていると考えられており、この内リンパし腫が大きくならないようにする治療が選択されます。
診断はめまいの性状、聴力検査をもとに行われますが、正確な診断には知識と経験が重要となります。また院長は内耳造影MRIという特殊なMRIを解析する方法を考案し、90%以上の高精度でメニエール病を診断する方法を発表しています。
治療は利尿薬や漢方薬の内服と水分摂取、有酸素運動などを中心に行います。飲み薬で改善しない場合は、内リンパ嚢開放術などの手術を考慮します。内服で約8割の患者さんの症状コントロールが可能で、残り2割のうち8割の患者さんは手術でめまいがゼロになったという結果があります。適切な治療により高確率でめまいのコントロールが可能ですので、専門家にご相談ください。

前庭神経炎

前庭神経というバランスの神経に炎症が起こることで突然めまいが起こります。原因は未だ明らかになってはいませんが、ウイルス感染が影響しているという説があります。風邪症状や下痢などの消化器症状がみられたあとに発症することもあります。激しいめまいが2,3日続き、その後徐々に回復していくという経過をたどります。
診断には赤外線CCDカメラを用いた眼振検査や重心動揺検査、聴力検査を行います。
治療は抗めまい薬、抗不安薬、ビタミン剤、内耳循環改善薬などを用います。通常、前庭代償とよばれる回復機構が働いて改善していきますが、その回復が十分でない場合や遅い場合は前庭リハビリテーションが必要となります。

聴神経腫瘍

聴神経は、音の情報を脳に伝える蝸牛神経と平衡感覚についての情報を脳に伝える前庭神経の総称で、そこにできた良性腫瘍を聴神経腫瘍といいます。聴神経腫瘍は、良性腫瘍のため転移することはありませんが、ゆっくりと大きくなっていきます。

聴神経腫瘍の代表的な初期症状は、腫瘍ができた側の難聴、耳の詰まり、耳鳴り、めまいなどです。腫瘍が大きくなり顔面神経や三叉神経などを圧迫すると、顔面のゆがみやしびれ、麻痺、痛み、感覚麻痺などがあらわれ、小脳を圧迫するとふらつきや歩行障害などの症状がみられます。水頭症を引き起こしたら、頭痛や意識障害などの症状があらわれることもあります。

聴神経腫瘍は良性腫瘍で進行が非常に緩やかであることが多いため、治療はせずにMRIを撮影しながら様子をみることがあります。
しかし、一般的に聴神経腫瘍が小さなうちに手術で取り除くことが多いです。患者さんが望めば手術をせずに放射線治療を行うこともあります。

循環障害(椎骨脳底動脈循環不全症)

脳に流れる椎骨動脈の血流が悪くなる病気です。椎骨動脈の血流が悪くなる原因は、動脈硬化により椎骨動脈や脳底動脈の血管が狭くなってしまうことです。しかし、中には生まれつき血管が細い方や外傷、頸椎による血管の圧迫などが原因になっていることもあります。

椎骨脳底動脈循環不全症の代表的な症状は、めまいです。首を大きくひねる動作や回す動作をしたときに起こり、数十秒間続きます。めまいに加えて吐き気や嘔吐、手足のしびれ、話しにくくなる、ものが二重に見えるなどの症状を伴うことがあります。

診断は赤外線CCDカメラを用いた眼振検査や頭部・頸部のMRI・MRAを行います。
治療は神経症状がない場合は循環改善薬や抗めまい薬を用いますが、麻痺などの神経症状がある場合や動脈乖離を疑う場合は手術や安静・降圧療法が必要となります。

めまいの検査

めまいの原因を突き止めるために、さまざまな検査を行います。

問診:めまいの原因を探るためには、めまいの種類やめまいが起こった日時、継続時間、めまい以外の症状などを聞くことは非常に重要なことです。また、症状だけではなくどのような生活習慣や食生活などを送っているのかを知ることも、めまいの原因を突き止める助けとなります。

聴覚検査:めまいの原因が耳の病気であることは多いです。そのため聴覚検査を行い、耳の聞こえ方に変化はないかを調べます。

眼振検査:めまい発症時には、眼球の動きが乱れます。また、めまいの原因によっては、特徴的な眼球の動きが認められることがあります。暗い部屋で特殊な眼鏡をかけて、眼球の動きを観察します。

重心動揺検査:体のふらつき、バランスの乱れを調べる検査です。重心動揺計の上に、目を閉じた状態と目を開けた状態で立ってもらい、体のふらつきを記録します。

心理検査:心因性めまいの原因を調べるための検査です。また、性格やストレス、不安などがめまいの原因と関係があるかを調べる検査でもあります。

その他に血液検査や血圧測定、レントゲンやMRIなどの画像検査などさまざまな検査を行っています。

めまいの原因は良性発作性頭位めまい症やメニエール病など耳鼻咽喉科領域であることが多いのが現状です。しかし脳血管障害や心臓、循環器疾患など命にかかわる、緊急性の高い病気のこともあります。その判断には専門的な知識と経験が必須です。当院では大学病院で専門的な診療、研究を行ってきた院長が中心となり、適切な判断を行いますので、安心して受診ください。
めまいの診断には詳細な問診と適切な検査が必要です。めまいに悩まれている患者さんと十分コミュニケーションをとり病状を把握することは重要ですが、診察に時間がかかります。十分な診察時間を確保し適切な治療につなげるために、めまいの初診はできるだけめまい外来の予約をお願いします(緊急の場合は除く)。
めまい外来では大学病院にも引けを取らない診断精度を確保するために、聴力検査、眼振検査、重心動揺検査、温度刺激検査、CT検査等を院長自らが行います。患者さんの体調を考慮し相談しながら行いますが、1~2時間程度かかる可能性がありますのでご予定の調整をいただいたうえでご予約をお願いいたします。

めまいの治療

まず適切な診断が必須です。良性発作性頭位めまい症、メニエール病など診断基準、治療指針に即した、根拠に基づいた治療(Evidence Based Medicine)でめまいのコントロールを行います。
突然めまい発作が起こったとしても慌てる必要はありません。動悸、激しい頭痛、麻痺、意識消失などはありますか?なければ落ち着いて、処方されたお薬を飲んで安静にしてください。当院ではそれぞれの患者さんの症状、病状に合わせて、頓服薬も処方しその使い方もご説明しますので、ご安心ください。